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認知症による行方不明への備えと対応
認知症の方がひとり歩きされ、行方不明になる。それは決して他人ごとではなく、ある日突然、誰にでも起こり得ることです。
行方不明は、たとえ「初めて」のことであっても、重大な事故につながりかねません。寒冷地の札幌では特に、発見が遅れることで、命の危険につながることが少なくありません。
「迷っても大丈夫。誰かが見てくれている。」そう思える街であるために、日頃からの「備え」と、いざという時の「つながり」を大切にしましょう。
- コラム(経験者・支援者の声)
- 【緊急時】もしもご家族等がいなくなったら(警察署での手続き)
- 【事前の備え】日頃からできる「備え」の取組
- 【地域のつながり】認知症の方を街全体で緩やかに見守る
- 【相談窓口】ひとりで悩まず、まずはご相談ください
- 【参考情報】広域での捜索と家族のケア
【コラム(経験者・支援者の声)】
認知症による行方不明は、ある日突然、症状が軽い方を含め、誰にでも起こり得る出来事です。
実際にご家族の行方不明を経験されたお二人から、市民の皆さまへの切実なメッセージをいただきました。
小杉正規さん~「まさか」が起きたあの日から~(札幌市在住・ご家族の行方不明を経験)
■ 突然、日常が一変したあの日
令和6年7月15日の昼前、居間のソファーでうつうつと眠っていたはずの妻が、私が隣の部屋でパソコンを操作していたわずか10分ほどの間に、何も言わず、何も持たずに家を出てしまいました。妻は軽度のアルツハイマー型認知症と診断されていましたが、以前から足腰が丈夫で、私が不在の隙に散歩に出ることはあっても、一緒にいる時に一人で出ることは一度もありませんでした。
妻が行方不明となってから、1年10ヶ月が経ちます。今でも「なぜあの時、気づけなかったのか」と無意識に自問してしまうことがあります。現在どこにいるのかと思うとかわいそうでならず、私自身がまもなく80歳を迎える今、この先どこまで探し続けてやれるのかという不安が、ふとした瞬間に心をよぎります。
■ 私の後悔と、伝えたい「決断」のタイミング
私の経験から、同じ境遇になる方を一人でも減らすために最もお伝えしたいのは、「初動の決断」の大切さです。私は、自分一人で探すことに時間をかけすぎてしまいました。また、妻が認知症であることを周囲に伏せていたため、近所や町内会にすぐに助けを求めることもできませんでした。
もし、身近な方がいなくなった時は、以下のことを躊躇しないでください。
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「15分程度の捜索」で見つからなければすぐに110番する、家の周りや心当たりのある場所を10〜20分探して見つからない時は、すぐに警察や家族に連絡してください※。
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「認知症」を隠さず、地域に協力を仰ぐなど早めに周囲へ事情を話し、多くの「目」で探してもらうことが、早期発見に重要です。
■ 経験したからこそわかる「事前の備え」
行方不明が発生すると、捜索の心労だけでなく、生活を維持するための事務的な困難にも直面します。私は、年金の受給停止や介護保険料の支払い、銀行口座の取り扱いなど、本人が不在であることの重い現実に突きつけられました。
こうした事態を防ぎ、万一の際に守り抜くために、今日からできる「備え」を確認していただきたいです。
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専門病院で早めに検査し、認知症の程度により、日常生活での注意すべき点などのアドバイスを受ける
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GPS端末などを「靴」などに装着する工夫
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札幌市認知症徘徊高齢者SOSネットワークシステムの理解と、相談窓口の把握
■メッセージ
私はこの困難に直面するまで、札幌市公式ホームページの「認知症ナビ」や相談窓口の存在を知りませんでした。一人で闇雲に探し回る中で、人との繋がりによって初めて、多くの支援機関に助けられました。
札幌市には、もっと市民にこれらの仕組みを広く周知してほしいと願っています。札幌が、認知症の方とその家族を街全体で温かく見守り、困った時にすぐ手が差し伸べられるような優しい街になることを、心から願っています。
※あくまでも目安であり一刻も早い警察への通報が、命を救う最大のカギです。ご家族等で警察への連絡のタイミングを日頃から考えてみましょう。
江東愛子さん~ピアサポートの力と「備え」の大切さ~
(NPO法人いしだたみ・認知症行方不明者家族等の支え合いの会 代表理事)
札幌市の皆さま、こんにちは。
NPO法人いしだたみ・認知症行方不明者家族等の支え合いの会 代表理事の江東と申します。
認知症による行方不明は、札幌市においても決して他人事ではない大きな課題です。行方不明事案は「初めて」であっても命の危険に直結し、特に寒冷地の札幌では、早期発見が命を救う最大の鍵となります。
■ 「帰り」を待ち続ける家族の孤独
私自身、長崎市で暮らす父が2023年4月に散歩に出たまま行方不明となり、今もなお帰りを待ち続けている当事者の一人です。捜索が長期化する中で直面したのは、「どこに助けを求めればよいか分からない」という絶望感と、深い孤独でした。
こうした過酷な状況に置かれたご家族を支えたいという想いから、私たちは2024年8月に当法人を設立いたしました。
■ 私たちの主な活動(ピアサポート)
家族だけで抱え込まないことが、何よりも重要です。私たちは同じ境遇にある家族が孤独に陥らないよう、以下の支援を行っています。
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家族の集い(オンライン):胸の内を語り合い、孤独を分かち合える場を定期的に開催しています。
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捜索活動へのアドバイス:実体験に基づいた具体的な捜索方法の相談に応じます。
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社会への働きかけ:行政や警察と連携した支援体制の構築や、啓発活動に注力しています。
■ 地域の皆さまへのお願い:命をつなぐ「情報の橋渡し」
行方不明になっても「必ず見つかる街」にするためには、皆さまの温かな「つながり」が不可欠です。
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当会の存在を伝えてください(情報の橋渡し): 皆さまの身近に、行方不明のご家族を待ち続け、一人で不安や葛藤を抱え込んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひ当会の存在を伝えてあげてください。
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さりげない見守りと声かけを: 「少し様子が違うな」と感じる高齢者を見かけたら、「驚かせない・急がせない・自尊心を傷つけない」の3つの「ない」を意識して、優しく声をかけてみてください。
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「事前の備え」を今日から: 早期発見のためには、靴(中敷き)への記名やヘルプマークの活用など、日頃からの準備が重要です。私自身の経験からも、この「備え」の有無が大きな差になると痛感しています。
■ メッセージ
札幌という大きな街だからこそ、隣人を思いやる温かな繋がりは何よりも大きな力になります。私たちはこれからも、ご家族の葛藤に光を当て、その「想い」に寄り添って歩んでまいります。
【緊急時】もしもご家族等がいなくなったら(警察署での手続き)
一刻も早い通報が、命を救う最大のカギです。「もう少し探してから」と思わず、すぐに警察へ連絡してください。
また、捜索中にご家族等が自宅に帰ってくることもありますので、家を空けないことも重要です。
- 警察(110番または最寄りの警察署)へ連絡
- 警察署の窓口で「行方不明者届」を提出
- 警察署の窓口で「徘徊認知症高齢者SOSネットワーク連絡票」(PDF:257KB)を記入・提出(事前登録制ではありません)
※警察署の窓口で申請を行うことで、市内の各行政機関や公共交通機関などの協力機関へ情報が配信されます。
【事前の備え】日頃からできる「備え」の取組
ひとり歩きは防げなくても、「早く見つける準備」は今日から始められます。
靴(中敷き)に氏名と連絡先を記入しましょう
- 警察では、道に迷っている高齢者を保護した際に、靴の中敷きを必ず確認しています。発見時にご本人の尊厳を傷つけることなく速やかに身元を確認し、ご家族等への連絡に繋がります。
- 札幌市では、靴の内部に貼る身元確認シールを区役所及び地域包括支援センターにて無料で配付しています。ご希望の方は、お住いの区の区役所保健福祉部保健福祉課もしくは地域包括支援センターまでお越しください。
身元確認のための工夫
- 身分証の携行、記名:財布に連絡先を入れる、衣服の裏地に記名する
- ヘルプマークの活用:裏面に緊急連絡を記載し、カバン等につける。周囲の人から声をかけてもらいやすくなります。
スマートフォン・GPS端末・スマートタグの活用
- スマートフォン:位置情報が分かる設定にし、首から下げられるストラップをつけておきます
- GPS端末:居場所をリアルタイムで特定できます(札幌市による費用助成はありません)
- スマートタグ:人口規模の大きい都市部で居場所を特定する手がかりになる、比較的安価なツールです(札幌市による費用助成はありません)
【地域のつながり】認知症の方を街全体で緩やかに見守る
■ 「おや?」と思ったら高齢者等に声をかけてみましょう。
- 3つの「ない」を意識して(驚かせない/急がせない/自尊心を傷つけない)
- 正面から視線を合わせてゆっくりと話しましょう(何かお困りですか?/どうされましたか?)
■ 街なかの頼れる味方「認知症の方にもやさしいお店・事業所」
- 店頭の登録ステッカーが目印です。外出中に不安を感じたときなどに気軽にお立ち寄り・相談いただけます。
- ご家族等から、あらかじめご本人がよく利用するお店の方に事情をつたえておくこともよいでしょう。

■ 認知症サポーター養成講座
認知症を正しく理解し、地域で見守る「認知症サポーター」を養成。基礎知識や適切な接し方を学ぶ講座を定期的に開催しています。

【相談窓口】ひとりで悩まず、まずはご相談ください
日々の不安や、ひとり歩きへの対策について、以下の窓口で相談を受け付けています。
■ 札幌市認知症コールセンター
介護経験者や専門職が、電話で悩みや不安を伺います。
また、ご相談の内容によって医療や福祉、介護などの機関を紹介します。お気軽にご相談ください。
- 電話番号:011-206-7837(なやみナシ)
- 受付時間:月曜日~金曜日10時~15時(祝日、年末年始を除く)

■ 地域包括支援センター
高齢者の方々が住み慣れた地域でいつまでも暮らせるように必要なサービスを調整したり、様々な方面から支援を行うなど、高齢者の総合相談窓口、支援機関として「地域包括支援センター」を市内27か所に設置しています。
- 一般的な業務時間平日8時45分から17時15分(12月29日から1月3日はお休み。)
※業務時間は、各センターで前後する場合があります。詳細は各センターまでお問い合わせください。

チラシ表(PDF:4,240KB)チラシ裏面(PDF:290KB)
【参考情報】広域での捜索と家族のケア
■ 全国の行方不明者と身元不明者情報
想像以上に遠方へ移動されるケースに備え、全国の情報を確認できます。
■ 家族のケア(ピアサポート)
- NPO法人いしだたみ・認知症行方不明者家族等の支え合いの会:行方不明を経験した家族同士が、精神的な支え合いを行っています